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執筆者の写真Bobson

遠慮ガチナ殺人鬼


どーも、最近断食やらダイエットやらで食欲が溢れ出してくるのを我慢するために、ひたすらYoutube等で他人がラーメンとか食べてる動画を見漁っているBobsonです。

逆効果な気もしますが、痩せたらこいつらを貪り食うんだー!という思いで眺めています。

リバウンドまっしぐら。。。

さて先日ボクラ団義さんの「遠慮ガチナ殺人鬼」を見てきました。

えー、昨日で千秋楽も終わっているのでネタバレ全開で行きます。

正直個人的にはハズレだなと思いました。

ボクラ団義さんは大好きで2015年の「時をかける206号室」からほぼ毎公演観劇させていただいているのですが、今回だけは、はまれませんでした。

とはいえ多分次回公演も見にいきます!

やっぱり好きなので。

というわけで面白かったと感じた方はこの先を読まない方がいいかもしれません。

以下、感想です。

あらすじ

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ある一人の老男性が亡くなった。 彼の死には不自然な点が多くあった。 その老男性の葬儀。なぜか式を終了してもそこに残り続ける不可思議な十数人の男女。 そこに訪れた警察は、その中の一人に老男性殺害の容疑で事情を聞きたいと言う。 そして疑われた者は答えるー

「その通りです。私が彼を殺しました」

あっさり容疑を認めるその者に、警察よりもむしろ周りが驚く。 「え……、私も殺したんですけど」

ボクラ団義が送る、過去作品再演プロジェクトシリーズ『Play Again』第8弾は、葬儀場と殺害現場を大勢の『犯人たち』の『自白』によって紡ぐ、2シチュエーション会話劇!

『無罪潔白』を周りに譲り合う、妙に遠慮がちな殺人鬼たちによる犯行の告白。 それによって浮かび上がる、亡くなった一人の老男性の生涯。

彼の職業は芸術家だった。しかし確かな実力の傍らで、彼は他人の盗作、『贋作』を造り続けた。そしてそれを周りに隠し続けた。 実力がありながらも遠慮がちに偽ものを造り続けた彼の生涯。その生涯にピリオドを打ったのは本当は誰なのか。何故犯行の告白をするものが何人も存在するのか。 何故、死ななければならなかったのか。

一体何が本当の真実で、何が偽りなのか。

「私が殺した」「私も殺した」ボクラ団義流のサスペンスコメディ舞台劇。

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ちなみに主に気に入らなかったのは脚本についてです。

役者さんと演出はいつも通り好きでした。

まず私が一番ハマれなかった理由は、

サスペンス・ミステリーにおいての禁じ手によってこの物語が完結したからです。

あらすじからもわかるようにこの物語の最大の肝が

「なぜ十数人の男女が皆「私が殺した」と自白するのか」

という謎にあると思います。

もちろんお話はその真相に向けて進んでいくのですが、

その明かされた真相というのが

陶芸家だった老男性は独自の技術で「普通の壺よりも非常に柔らかく」かつ「時間が経つと空気に溶け出す」壺を作り出し、それによって自分が恨みがある人々に自分を殺させたように見せかけた

というものでした。

え?

そんな壺、超能力じゃん!

そしてこの壺の技術に関する伏線が一切なくぽっと出の設定が真実に直結してしまうのです。

これは殺人のトリックは超能力でしたと言ってるのと変わりありません。

密室トリックだと言っておいて、実は壁をすり抜ける薬品を開発しましたと言われるようなもんです。

ひどい。

こういう設定を出すのであれば、事前にそういう技術が起こりうる世界観だということをお客さんに知らせなければいけません。

しかしそれが一切なく、リアルな、つまり現実的な世界観でそれをやってしまったので

がっかりしてしまったのでした。

しかも公演時間が2時間30分ほど。

待たされて待たされて真相がそれって、そりゃないぜとっつぁんー!となってしまったわけです。

さらに物語の最後、その老男性の息子がその空気に溶け出す壺に毒を混ぜることによって作られた殺人兵器壺を使って葬儀場で父親の復讐を完遂させるのですが、

ちょっと待て!

壺が空気に溶け出すまでの時間設定の話なかったぞ??

老男性は壺が空気に溶け出すことを利用して証拠隠滅を図りました。

1日の間に何回も殺されたふりをしていることから、

この老男性は壺が溶け出すまでの時間を自在に操れることになります。

普通に考えると壺が溶け出す時間を決定するのは壺を作った時になると思います。

壺が完成した後で壺が解ける時間を操作するのは流石に無理がありますし。

そうすると老男性は毒入りの壺が溶け出す時間も自由に設定できたことになります。

なにそれ最強すぎない?

普通何時間後に溶けるとかいう設定にしてその中で、いかにしてその何時間後に合わせて証拠を消せるかってのが味噌なんじゃないんですか?

それによって設定の超能力ぶりに拍車がかかってしまいました。

でも復讐を完遂させるときに息子は言いました。

「集まった人々にわざわざ葬儀場で長い間自白をさせていたのは、(壺が溶け出すまでの)時間稼ぎだ。」と。

自由に時間設定できるなら時間稼ぎいらなくない?

そして息子は毒入りの壺が溶け出す時間をいつ知ったの?

父親から聞くしかないけれどそんなそぶりは一切なかったですよ!

なんとなく通夜終わりに設定されてそうだと思ったの?

超能力?

確かに前半に心がわかる的な発言はあったけども!

それってそういう超能力の類なんですか?

いくらみんなに自白させるまでを含めて復讐だったと言っても

このガバガバ超能力壺が真相では興ざめです。

全てご都合主義に思えてしまいます。

そして壺が溶け出して毒が散布されることによって登場人物全員死ぬってことなんですが、

そのために葬儀場が封鎖されています。

いや、どうやって?

葬儀場を密閉するのってクソ大変ですよ?

大変っていうかできるのかそんなこと?

時間をかければできるのかなとも思いましたが、

一般の参列者は普通に帰ったわけですから、

一般参列者が帰った後、

そして刑事さんは普通に入ってきたのでその後からの作業になります。

刑事さんがきた後息子退出しましたっけ?

仮に他の人の事情聴取の間に退出したとしても

犯人である喪主の息子は基本的に長時間退席するわけにも行きませんから、

葬儀場を中から開けれないようにするのは、ほぼ不可能でしょう。

しかも葬儀場の係の人が誰もいない。

そんなことあります?

そんなことの積み重ねの結果、サスペンスコメディというのも逃げに感じました。

とんでも設定だけどコメディだから許してね、みたいな。

コメディにしては笑いの要素少なかったですし、最後のオチも全然笑えるものではありません、というかシリアスです。

トリックに、そして真相に自信がないからコメディを銘打ったように感じてしまってそこらへんも今回の脚本が好きになれない理由でした。

次に登場人物についてです。

多すぎ!

これだけの人数が一人一人なぜ殺したかを話して行けばそりゃ2時間超えますわ。

正直1人目の回想シーンが始まったとき、「え? これ全員分やるの? つらっ!」と思ってしまいました。

演劇という性質上仕方がない面もあるかと思いますが、もう少し徐々に真実が明らかになる感じで展開してくれたらなぁと。

話は逸れますが、年末に見た根本宗子さんの「愛犬ポリーの死、そして家族の話」にもそういう部分がありました。

主人公の3人の姉夫婦の話を順番にやって行くのですが、これも正直1人目の時点で

「あ、これ3人の姉全部やるのか。つらっ!」と思ってしまいました。

演劇にありがちなのですが、私はこういう1人ずつ紹介して掘り下げるみたいな構成がどうも苦手なようです。

それが今回は

・画家

・弟子

・老男性に夫を殺されたと言う女

・↑の女が好きな息子の妻の弟

・小説家

・金貸し(2人組)

・美術商(2人組)

・刀匠

・息子

(順番適当)

とうじゃうじゃ出てくるものだから、途中で「あーまだあの人とあの人残ってるし、

前半で喋ってたあの人も秘密あるって言ってるし…うー」となるわけです。

そしてあらすじ「一体何が本当の真実で、何が偽りなのか。」と謳ってる割に、

みんな嘘がバレバレすぎ。

嘘なの丸わかりで長々と話聞かされるの辛いです。

「どうせ嘘なんでしょ?」と思いながら聞いていると集中できません。

後半で明らかになるであろう秘密も「それは秘密です」とかこれ見よがしに秘密にするし。

これでは、後で本当のこと言いますよと言ってるようなものです。

さらにご都合主義に感じるのは話す順番。

例えば画家とかは後半に話さないとその他の人の話が霞んでしまう事実を持っています。

でもその画家のキャラ設定が話したがりの私が私が人間ときたもんです。

葬儀に乱入して私から話させなさいよ!とまくし立てるにもかかわらず、

脚本上の都合で話を後回しにさせられてしまいます。

そしてそれに対しても特に文句を言いません。

一言「待たされるの慣れてない」的なセリフで締めてしまいます。

普通こんだけまくし立ててくる女がいたら、なだめるためにも刑事は聴取を先にするべきです。

でもお話しの都合上後半に持って行かれているのがありありとわかってしまって、そこも残念でした。

そんな風にストーリー(あるべき結末)に沿うために登場人物の心情がないがしろにされている感があって、話の流れのために素直に話したり頑なに話さなかったりする人々の心情にもご都合主義に感じてしまいました。

自白のタイミングもそうです。

一応適当な理由をつけていましたが、

殺された二日後になってこれだけの人数が一斉に自白した理由に対しての説得力が弱いです。

逮捕されたいなら、その日のうちに自首するべきでしょう。

にしても容疑者たちがみんなバカ。

全員壺で頭叩いて、血(血糊)が出ただけで死んだと思ってる。

突発的な犯行の人も計画的な犯行の人もいたわけですが、

まず計画的な犯行の人は死んだことぐらい確認しろよ!

老男性は死んだふりをしているわけですから、呼吸もあれば脈もあれば心臓もどくどく脈打ってるわけです。

突発的な人にしたって息があるかくらいは確認するんじゃないですかね?

登場人物たちが遺体を確認させろと言います。

不謹慎だからという理由で確認させてくれません。

確認したら、速攻で死因が頭叩いたからじゃないことはわかるっていうのに。

その割には葬儀場での死者への悪口は不謹慎だけど許すとなる。

この辺もガバガバに感じました。

後、これは細かいことですが、

最初みんな定位置に座っていて、自分の話になると中央に立って出てきて話をするのですが、

何人かの人物が、話終わった後、話のメインから邪魔になりそうになると舞台の真ん中から

スタスタスタと今私のシーンじゃないんでと言わんばかりにもともと他人が座っていた席でも御構い無しに座るんです。

お通夜の後で初対面レベルの人がもともと座ってたところに、その人がちょっと席を立ったからって空いたそこに座りますかね?

完全に役者の舞台配置上の都合に見えてしまいました。

で、そんな登場人物たちがたどり着いたオチ。

結局誰が老男性を殺したのかという話ですが、

息子が殺していました。

普通かよ!

もともと物語冒頭に息子と老男性のシーンがありこれ見よがしに(なんか入ってるっぽい)コーヒーを渡すシーンを見せつけ、

しかも老男性に最後にあったのが息子だという事実がわかり、

他の人は壺で殺したと言っているのに死因は薬物だとわかる。

もう息子しかいないじゃん!

物語前半で息子が殺したの確定じゃん!

推理もクソもないじゃない?

コーヒーのシーンを伏線にするなら、超能力壺の話に伏線をくださいよ!

てなもんで、コメディシーンは普通に笑えたのですが、シリアスシーンになると

私の中で脚本に対するダメ出しがぐるんぐるん。

結果、今までで一番楽しめなかったのでした。

今までの傾向を見るとボクラ団義の久保田唱さんという脚本・演出家は、

こう言ったサスペンスよりも割となんでもあり系の

ザ・エンターテインメントの方が得意なのかなと思いました。

特に前回の「戦国アイドルタイム」や「飛ばぬ鳥なら落ちもせぬ~梟雄と呼ばれた男 右筆と呼ばれた男~」なんかのポップな時代ものがいいなぁと感じました。

どっちも若干ファンタジー入ってますし。

次回は「関ヶ原で一人」ということで時代物なので期待です!

悪いところばっかり言ったので、よかったと思ったところも

・回想シーンを登場人物が囲んで回想しながらツッコミを入れるのは舞台ならではだなと思いました。

・今出舞さんの関西弁&ツッコミが面白かったです。調べたら大阪の人。さすが。

・後藤健流さんの小説家が狂気に満ちていてよかった。怪演ってやつですかね。

・添田翔太さんの刀匠がアホ役だったのですが、もう本当にアホに見えて面白かった。

・壺消える瞬間見逃した。いつ消えたんだあれ?

・タイトル「遠慮ガチナ殺人鬼」。タイトルの意味がわかった時におおっとなりました。

初めは自白している登場人物たちが遠慮がちな殺人鬼と思わせて、実は老男性が遠慮がちな殺人鬼だった。うん。すっきり。

…ですが、その後結局「遠慮がち」ではなかった感じになりそこはがっかり。

こういうことをするならタイトル回収の後はそれをひっくり返さないで欲しいですよねー。

みたいな感じです。

…と偉そうにうだうだ書いてきましたが、実際自分の身に置き換えるとできてるのかなーと不安になることしきりです。

特に物語の進行に合わせて登場人物の心情が若干狂ってしまうというのは、

やりがちなミスかなーと思っているので今までも気をつけていますが、

今後もより一層気をつけねばと思いました。

最後に。

一緒に見に行った人は「面白い」と感じていたようなので、

私が単にうがった見方をしてしまっただけかもしれません。

もっと素直に見れば楽しめたのかもしれません。

前にもちらっと書きましたが、なにが多くの人に受けるのかを考えるのはすごく難しいです。

私の好みが大衆と少しずれているのは自覚しているので、(好きな映画のレビューとかを見ると軒並み低評価だったり…)

なにが大衆に受けるのかを勉強しようとはしているのですが、自分が作りたいものと大衆受けの狭間でもがいている感じです。

まあ答えは出ないのでもがきながら頑張って行こうと思います。

以上です。

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